建築・環境系資格2026-08-04監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

石綿含有建材調査者の求人動向 — 2023年義務化と資格3区分の実態

この記事の要点

「先生、うちの解体屋、去年までは石綿の事前調査なんて自分たちで簡単にチェックして済ませていたのに、今年に入ってから元請けさんに『有資格者がいないなら現場に入れない』って言われてしまって。急にどうしたんですかね」——先日、都内で解体工事業を営む社長さんから、こんな相談を受けました。

結論から言うと、この社長さんが感じている息苦しさは、会社の準備不足が原因ではなく、法律そのものが変わったことによる構造変化です。2023年10月1日を境に、建築物の解体・改修工事で行う石綿(アスベスト)の事前調査は、原則として有資格者以外が担当できなくなりました。「調査ができる人を自社に置いているかどうか」が、受注できる工事の範囲そのものを左右する時代に入ったということです。今日は、この石綿含有建材調査者という資格が、なぜここまで急に『必須の資格』に変わったのか、そして求人の現場ではどう扱われているのか、さらに取得後によく聞く失敗談まで、僕が実際に現場で聞いてきた話を交えてお伝えしていきます。

0. 結論 — 「調査ができる人」がいないと着工できない時代

石綿含有建材調査者は今、解体・改修工事の世界で「持っていれば有利」な資格から、「いないと仕事そのものが止まる」資格へと立場を変えつつあります。僕の体感値ですが、この数年、求人票の表現が「有資格者歓迎」から「有資格者必須」へと明確に変わってきているのを感じます。背景にあるのは2021年4月の大気汚染防止法改正の段階施行と、2023年10月の経過措置終了です。まずは資格の中身、次に法改正の経緯、資格区分、求人での扱われ方、実務手順、そしてよくある失敗という順番で見ていきましょう。

1. 石綿含有建材調査者とはどんな資格か

石綿含有建材調査者は、建築物の解体・改修工事に着手する前に、使われている建材に石綿(アスベスト)が含まれているかどうかを調べる「事前調査」を担当するための資格です。国土交通大臣・環境大臣の登録を受けた講習機関が実施する講習(座学と修了考査が中心)を受講・合格することで取得できます。実務経験の年数要件は基本的になく、未経験からでも受講できる点は、実務経験がなければ受験すらできない選任系の国家資格とは事情が異なります。

僕が最初にこの資格の話を聞いたときに驚いたのは、「調査する担当者本人」に資格がなければ、事前調査という工程そのものが法律上成立しなくなったという点でした。以前は現場の知識のある担当者がチェックすれば済んでいたものが、今は有資格者が調査しなければ、その調査結果自体が有効なものとして扱われません。着工の入口そのものが、資格の有無で塞がれる仕組みに変わったわけです。

2. なぜ2023年から「必須」の資格になったのか — 規制強化の3段階

石綿含有建材調査者がここまで急速に注目されるようになった背景には、大気汚染防止法・労働安全衛生法まわりの規制強化があります。環境省・国土交通省・厚生労働省が公表している資料をたどると、おおむね次の3段階で義務化が進んできました。

  1. 2020年6月、大気汚染防止法の改正により、解体・改修工事における石綿の事前調査結果の記録・保存・報告が義務化されました。
  2. 2021年4月から、一定規模以上の工事において、事前調査を実施する者が有資格者であることを求める規定が順次施行され始めました。
  3. 2023年10月1日、猶予されていた経過措置が終了し、床面積などの要件に該当する工事では、有資格者による事前調査の実施が完全に義務化されました。

経過措置期間中は、無資格でも一定の条件のもとで調査を行える猶予がありましたが、それが終わったことで、有資格者を自社に確保していない解体・改修業者は、外部の調査会社に発注するか、社員に資格を取らせて内製化するかの二択を迫られるようになりました。僕が話を聞いた解体業の社長さんの多くは、後者を選んで求人を出し始めています。理由を尋ねると「毎回外注していると調査の順番待ちで着工が遅れる。それなら自社に1人置いたほうが早い」という、シンプルな回答が返ってきました。

3. 資格は3種類 — 担当できる建物の範囲が違う

石綿含有建材調査者は、2023年4月の講習制度見直し以降、大きく3つの区分に整理されています。担当できる建築物の規模や用途が異なるため、求人票を見るときはどの区分の資格を求めているのかを確認しておく必要があります。

資格区分対象となる建築物取得者が多い層
一戸建て等石綿含有建材調査者住宅・共同住宅の各住戸など、比較的小規模な建築物リフォーム業・工務店の担当者
一般建築物石綿含有建材調査者住宅以外の一般的な建築物(事務所・店舗・倉庫など)解体業・建設業の現場担当者
特定建築物石綿含有建材調査者鉄骨造・鉄筋コンクリート造など、構造が複雑な大規模建築物ゼネコン・専門の環境調査会社の技術者

求人票に「石綿含有建材調査者歓迎」とだけ書かれている場合、実務では一般建築物の区分を指していることが多いというのが僕の体感です。特定建築物まで対応できる人材は市場にまだ少なく、専門の環境調査会社の求人票では、特定建築物区分の保有者を明確に別枠・別条件で募集しているケースを何度も見かけました。

4. 求人票の実態 — 誰が、どんな条件で採用しているのか

実際にどんな会社がこの資格を求めているのか。僕が求人票を見比べてきた範囲では、大きく3つの層に分かれます。一つ目は解体工事会社そのものです。着工前の事前調査を内製化する目的で、施工管理担当者に資格取得を促すか、有資格者を中途採用する動きが目立ちます。二つ目は環境調査・分析の専門会社です。石綿だけでなく土壌汚染調査やアスベスト分析事業と合わせて展開している会社が多く、特定建築物区分まで持つ人材を歓迎条件に据えていることが多いです。三つ目はゼネコン・建設会社の環境安全部門です。大規模改修案件を継続的に抱える会社ほど、社内に有資格者を確保しておく必要性が高まっています。

給与水準については、厚生労働省の賃金構造基本統計調査が資格そのものを区分して集計しているわけではないため断定はできませんが、僕が求人票を見てきた体感値としては、建設・解体業の施工管理職にこの資格を加えると、月収ベースで1万円台後半から数万円程度の資格手当が上乗せされているケースが目立ちます。厚生労働省の一般職業紹介状況を見ても、建設・採掘の職業は有効求人倍率がここ数年おおむね5倍前後という、全職業平均を大きく上回る水準で推移しており、この業界全体の人手不足感が、隣接資格である石綿含有建材調査者の需要を下支えしていると僕は考えています。

ケース比較 — 一般建築物どまりの人と、特定建築物まで取った人

僕が実際に話を聞いた2人のケースを比べてみます。1人目は解体業10年目のAさん。一般建築物区分だけを取得し、自社の解体案件の事前調査を担当するポジションに収まりました。資格手当は月2万円程度で、業務範囲は既存の施工管理業務に事前調査が加わった形です。2人目は環境調査会社に転職したBさん。もともと建築設備の点検業務をしていた方で、一般建築物に加えて特定建築物区分も取得したところ、大規模建築物の調査案件を単独で任されるようになり、求人票の募集条件でも「特定建築物区分保有者」として別枠の待遇提示を受けたそうです。同じ資格でも、区分をどこまで積み上げるかで任される仕事の規模がはっきり変わる、という好例だと感じています。

5. 取得ルートと、今日からできる実務手順

取得の流れはシンプルです。国土交通大臣・環境大臣の登録を受けた講習機関が実施する講習(多くは2日間程度、座学と修了考査が中心)を受講し、修了考査に合格すれば資格が付与されます。ここでは、今日から動くための具体的な手順を、所要時間の目安つきで整理しておきます。

  1. まず自分の勤務先(あるいは志望先)がどの区分の調査者を必要としているのか、求人票やハローワークの求人内容で確認する(所要30分程度)。
  2. 登録講習機関のウェブサイトで、一戸建て等・一般建築物・特定建築物のどの区分から取得するかを決め、直近の開催日程を確認する(所要1時間程度)。
  3. 講習を予約し、2日間程度の座学と修了考査に臨む(拘束2日間)。
  4. 修了後、実際の調査現場にベテラン調査員と同行し、図面の読み方や建材の目視判別、分析機関へのサンプル提出手順を身につける(目安1〜2ヶ月)。

講習を修了しただけで「即戦力」として扱われるわけではない、というのも僕が現場で聞いた話です。実際の調査では、講習だけではカバーしきれない実務知識が求められます。僕が話を聞いたある解体業の社長さんは、資格取得後の社員をベテランの調査員に1〜2ヶ月同行させてから独り立ちさせている、とおっしゃっていました。「資格は入口。現場で使えるようになるまでは、もう一段階ある」という言葉が印象に残っています。解体・改修工事の需要が集中する年度末にかけて、講習の予約枠が埋まりやすいという声も現場でよく聞くので、動くなら早めがおすすめです。

6. よくある失敗と対処法

僕がこれまで聞いてきた中で目立つ失敗は3つあります。1つ目は「区分違い」です。一戸建て等の区分しか持っていないのに、一般建築物の調査を頼まれてしまい、後から区分外だと発覚して調査をやり直したというケースを聞いたことがあります。求人応募の段階で、自分の区分と業務範囲が一致しているかを必ず確認することが対処法です。2つ目は「講習だけで独り立ちしようとする」失敗です。前述の通り、修了考査に合格しただけでは実務の勘所が身につかず、初回の調査で建材の見落としが起きるケースがあります。先輩調査員への同行期間を、たとえ短くても設けることが有効です。3つ目は「資格取得が目的化して転職活動が後回しになる」ケースです。資格を取ったこと自体に満足してしまい、実際に求人票を比較検討する段階に進めないまま時間が過ぎてしまう人を何人か見てきました。講習の申し込みと同時に、応募先候補を2〜3社リストアップしておくくらいの並行進行が、僕としてはおすすめです。

(結論)

皆さんいかがでしたでしょうか。石綿含有建材調査者は、華やかな資格ではありませんが、2023年の完全義務化を境に「あるとないとで受注できる工事の範囲が変わる」資格になりました。解体・改修工事という、この先もなくなることのない仕事の入口を担う資格だからこそ、僕は今後も地味に、しかし着実に需要が積み上がっていく分野だと考えています。今の仕事に事前調査という工程が関わっているなら、まずはどの区分の資格が求められているのかを確認するところから始めてみてください。では今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 石綿含有建材調査者になるにはどんな講習を受ければいいですか?

国土交通大臣・環境大臣の登録を受けた講習機関が実施する講習を受講し、修了考査に合格することで取得できます。講習は一戸建て等・一般建築物・特定建築物の3区分に分かれており、多くは2日間程度で座学と修了考査が中心です。実務経験年数の要件は基本的になく、未経験からでも受講できます。

Q. 資格がなくても解体工事の仕事はできますか?

工事自体は資格がなくても担当できますが、2023年10月1日の経過措置終了以降、一定規模以上の解体・改修工事で行う石綿の事前調査は、有資格者でなければ実施できなくなりました。事前調査を任されるポジションを目指す場合は、資格取得が前提になります。

Q. 石綿含有建材調査者の年収はどのくらいですか?

資格そのものを区分した公的な年収統計はありませんが、僕が求人票を見てきた体感値では、建設・解体業の施工管理職にこの資格を加えると月1万円台後半〜数万円程度の資格手当が上乗せされるケースが目立ちます。基本給は勤務先の施工管理職としての水準がベースになります。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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