資格別求人動向2026-07-16監修:山根一城(株式会社ポテンシャライト)

消防設備士の求人動向 — 甲種と乙種で分かれる工事と点検の壁

この記事の要点

「消防設備士って、電気工事士と何が違うんですか?」——先日、防災設備会社への転職を考えているという方から、そんな質問をいただきました。

結論から言うと、消防設備士は「甲種」か「乙種」かで、できる仕事の範囲がはっきり分かれる資格です。甲種を持っていれば工事・整備・点検のすべてができますが、乙種は整備と点検しかできません。この一点が、求人票の指定条件にそのまま反映されていると僕は感じています。今日は甲種と乙種でどう市場が分かれるのか、そして乙種から甲種へどう階段を上るのかを、僕の知る範囲で整理していきます。

0. 結論から言うと——甲種か乙種か、まず知ってほしいこと

消防設備士は、消火器・スプリンクラー・自動火災報知設備・避難器具といった消防用設備等の工事・整備・点検を行うための国家資格です。名前だけ聞くと一つの資格のように思えますが、実際は甲種と乙種という二つの入口があり、そのどちらを持っているかで担当できる業務の範囲がまったく違います。個人的には、この違いを理解せずに「消防設備士を取ればいい」と考えて受験する人が意外と多いと感じています。工事の現場に入りたいのか、点検の仕事をしたいのか。まずそこを自分の中で決めてから、どちらの類を受けるか選んでいく方が、後で「思っていた仕事と違った」というズレを防げると僕は考えています。求人票を見比べていくと、この甲種・乙種の違いが採用条件に色濃く出ているのがよく分かります。

1. 消防設備士とは何を扱う資格か

消防設備士の免状は、甲種が特類と第1類から第5類までの合計6区分、乙種が第1類から第7類までの合計7区分に分かれています。取り扱う設備は類ごとに異なり、たとえば第1類は屋内消火栓やスプリンクラー、第4類は自動火災報知設備、第6類は消火器といったイメージです。ここで押さえておきたいのは、業務範囲の違いです。甲種の免状を持っていれば、該当する類の設備について工事・整備・点検のすべてを行えます。一方で乙種の免状は、整備と点検はできますが、工事を行うことはできません。つまり「新しく設備を取り付ける仕事」に関わりたいなら甲種が必須で、「今ある設備を維持管理する仕事」であれば乙種でも道が開けるということです。この業務範囲の違いを、僕は現場に入る前にきちんと理解しておいてほしいと思っています。似たような資格に見えても、実際に現場で求められる免状は業務内容によって明確に分かれているからです。

2. 甲種・乙種で分かれる「工事」と「点検」、求人はどう違う

ここからは僕の体感値の話になりますが、防災設備会社の求人票を見比べていくと、工事案件を主に扱う会社ほど「甲種必須」または「甲種歓迎」という表記が目立つ印象があります。新築や改修工事で消防設備を設置する仕事は、そもそも甲種の免状がなければ受注しても現場に人を出せません。そのため工事系の会社にとっては、甲種を持つ人材は事業の受注力そのものに直結する存在になります。逆に、ビルメンテナンス会社や点検専門の会社の求人を見ると、乙種のみでも応募条件を満たしているケースが多く、複数の類を持っていることのほうが重視される傾向があると感じています。点検業務は建物ごとに設置されている設備の種類がバラバラなので、乙種6類と乙種7類など複数の類を持っている人の方が、一人で対応できる範囲が広がり評価されやすいというのが僕の見立てです。つまり、工事系は「甲種を持っているか」、点検系は「乙種でも何類持っているか」という、少し違う軸で評価されているというのが実感です。どちらの市場を狙うかで、次に受ける類の優先順位も変わってきます。

3. 求人でよく見る条件と待遇の目安

待遇面については、あくまで僕が独自に見てきた範囲でのガイドの目安値として捉えていただきたいのですが、消防設備士の資格を持っていることで、防災設備会社やビルメンテナンス会社の求人では資格手当がつくケースが一般的だと感じています。手当の額は会社や地域によって差があり、複数の類を保有している場合や甲種を保有している場合に手当が上乗せされる設計になっていることが多い印象です。厚生労働省の一般職業紹介状況では、設備管理や保安に関わる職種は求人数が求職者数を上回る傾向が続いていると公表されており、消防設備士が活躍するビルメンテナンス・防災設備の分野もこの傾向と無関係ではないと僕は見ています。ただし、資格を持っているだけで自動的に年収が跳ね上がるわけではなく、あくまで「選任される仕事に就ける」「工事の受注に関われる」という機会が広がることが本質だと考えています。手当と市場価値は別物として捉えた方が、期待値のズレを防げると思います。

4. 取得ルート——乙種から甲種へのステップアップ

消防設備士のキャリアの組み立て方として、僕がよく勧めているのは「まず乙種、その後に条件が整ったら甲種」という順番です。乙種にはほぼ受験資格がなく、誰でも受験できます。一方で甲種には受験資格があり、大学等で機械・電気・工業化学などの特定の科目を修めていること、乙種の免状交付後に一定期間の実務経験を積んでいること、あるいは電気工事士や技術士など一部の国家資格を保有していることのいずれかを満たす必要があります。つまり、何の資格も実務経験もない状態からいきなり甲種を受けることはできない設計になっているわけです。乙種6類(消火器)は比較的取り組みやすいと言われることが多く、ここからスタートして実務経験を積みながら他の類を増やし、条件が整ったところで甲種に進むというルートが、僕の見てきた中では現実的な階段の上り方だと感じています。焦って甲種の受験資格を無理に作ろうとするより、乙種で経験と手当を積みながら段階を踏む方が、結果的に早く市場価値が積み上がっていくケースが多いという印象を持っています。

5. 今日からできる実務アクション——甲種挑戦の第一歩

ここまで読んで「では自分は何から始めればいいのか」と思った方のために、今日からできる具体的なアクションを整理しておきます。

  1. まず自分が狙いたい業界を「工事系」か「点検系」かで一度決めてみる。ここが曖昧だと、次に受ける類の優先順位も曖昧になります。
  2. 点検系を狙うなら乙種6類(消火器)から、工事系を将来的に狙うなら乙種を経て甲種の受験資格を作れる実務経験のある職場を選ぶ。
  3. 今の勤務先や応募先の求人票で、実際にどの類が「必須」「歓迎」と書かれているかを3社ほど並べて見比べてみる。傾向が見えてきます。
  4. 過去問題集を1冊決めて、まず筒記試験の合格ラインである6割を目安に、1〜2ヶ月の学習スケジュールを組む。
  5. 甲種を目指す場合は、自分の学歴・実務経験・保有資格のどれが受験資格に該当するかを、早い段階で消防試験研究センターの公式情報で確認しておく。

この5つは、僕が相談の場でよくお伝えしている順番そのままです。特に1番目の「業界を決める」を飛ばして資格の勉強だけ始めてしまう人が多いのですが、そこを先に決めておくだけで、次に受ける類の選び方に迷いがなくなると感じています。

6. ケースで比較——乙種だけの人と、甲種+電気工事士を掛け合わせた人

以前、キャリア相談の場で会った40代の方の話を、特定できない形に整理してお伝えします。その方はビルメンテナンス会社で乙種6類・乙種7類を保有して長く点検業務に携わっていましたが、工事案件に関わりたいという思いから、電気工事士第二種を取得し、その後甲種4類の受験資格を満たして取得しました。結果として、点検だけの担当から工事の一部工程にも関わるポジションに変わり、資格手当も見直されたと聞いています。一方で、乙種のみで長く働いている方も、複数の類を積み上げて点検の専門性を高めることで、点検業務のリーダー的な立場に上がっていくケースを見てきました。どちらが正解というわけではなく、工事に関わりたいか、点検を極めたいかという方向性の違いだと僕は考えています。以下は、あくまで僕の観測範囲でのイメージを整理した比較です。

比較軸乙種のみ保有甲種+電気工事士を掛け合わせ
担当できる業務整備・点検工事・整備・点検すべて
応募できる求人の幅点検専門会社・ビルメン中心防災設備会社の工事案件にも応募可
キャリアの伸ばし方類を増やして点検の専門性を高める工事の受注力・施工管理側への展開

どちらの道も、資格を「持っているだけ」で終わらせず、実務経験と組み合わせて積み上げていくことが前提になっている点は共通していると感じています。

7. よくある失敗と対処

最後に、僕がこれまで見てきた中でよくある失敗パターンを2つだけ挙げておきます。1つ目は、業界を決める前にいきなり甲種の勉強を始めてしまい、受験資格を満たしていないことに気づいて時間を無駄にしてしまうケースです。対処としては、勉強を始める前に必ず自分の受験資格の有無を確認することをお勧めします。2つ目は、乙種の類を増やすことだけに集中してしまい、実際の求人でどの類が求められているかを確認しないまま資格を積み重ねてしまうケースです。対処としては、資格取得の前に応募したい会社の求人票を3社ほど見比べて、実際に求められている類を把握しておくことだと僕は考えています。資格は目的ではなく手段なので、市場側のニーズと自分の取得計画をこまめに照らし合わせる姿勢が大事だと感じています。

8.(結論)消防設備士は「地味だが折れない」資格だと僕は思う

消防設備士は、電気工事士やボイラー技士のように名前が広く知られている資格ではありませんが、防災設備会社やビルメンテナンス業界では確実に必要とされ続けている資格だと僕は感じています。甲種か乙種か、工事系か点検系か。この二つの軸で自分の方向性を決めることができれば、次に何の類を受ければいいかは自然と見えてきます。焦らず乙種から始めて、実務経験を積みながら甲種へのステップアップを考えていく。この地味な積み上げこそが、結果的に折れない市場価値につながっていくと僕は考えています。皆さんいかがでしたでしょうか。ではまた次の記事でお会いしましょう。今日もがんばりましょう。

よくある質問

Q. 消防設備士は乙種だけでも転職に使えますか

使えます。ただし乙種は整備と点検しかできないため、工事案件を扱う防災設備会社では甲種指定の求人が多い印象です。ビルメンテナンス会社や点検専門会社であれば乙種のみでも十分に評価されるケースが多いと僕は感じています。まずは自分が狙う業界が工事系か点検系かを決めることが先だと考えています。

Q. 消防設備士の甲種はどうすれば受験できますか

甲種の受験には受験資格が必要で、大学等で特定の科目を修めた場合、乙種免状交付後に一定期間の実務経験を積んだ場合、または電気工事士や技術士など一部の国家資格を保有している場合などに受験できます。乙種にはほぼ受験資格がなく誰でも受けられるため、乙種からスタートして条件を満たしてから甲種に進むルートが現実的だと思います。

Q. 消防設備士と電気工事士はどちらを先に取るべきですか

結論としては、目指す業界によって順番を変えるのが良いと考えています。防災設備会社での工事業務を目指すなら電気工事士を先に取ると甲種消防設備士の受験資格を得やすくなります。ビルメンテナンス職を目指すなら消防設備士乙種から入っても市場価値は十分に作れると僕は見ています。

監修:山根 一城(株式会社ポテンシャライト 代表)

IT人材業界20年、ギークリー創業を経て現職。個人として通算4,200名のキャリア面談を実施してきた経験に基づき監修しています。本文中の年収・難易度等は独自ガイドの目安値であり、個人の経験・企業により変動します。

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